『鬼ごっこのまち物語り』Vol,21
中島 智
羽衣国際大学 現代社会学部 講師
去る3月に鬼ごっこ総合研究所で初めての研究発表大会が開催された。私も発表者のひとりとして参加する機会に恵まれたが、民俗学、運動学、学校体育、環境教育、スポーツ文化、ソーシャルイノベーションなど研究分野も多様で、多士済々の顔ぶれに驚きを隠せなかった。鬼ごっこといえば、遊びであり、スポーツである。が、最近では学問でもあるのだ。
当事者による現場の息吹を伝える報告を聴きながら、かつて柳田国男がいったように、「学問は結局世のため人のため」でなくてはならないと強く思った。「すでに今日のように、何ぴとにも学問の機会が与えられている以上は、みずから進んで必要なるものを選ばなければならないのである。学問ばかりは「あてがい扶持」では行かぬ」と。「まず我々が自分の問題を作って、それに対する答えを求めることにすればよいのである」とも柳田はいう(柳田国男『青年と学問』1928年)。
考えてみれば、鬼ごっこほど私たちに身近で、探求するのにおもしろい問題はないかもしれない。何といっても、こどもの遊び文化として伝承されてきた鬼ごっこを多角的に考え、行動していくことは、少子高齢化という時代にあって地域社会みんなで子育てを支えようという機運を高めることにつながるのではないか。少なくとも、こどもの遊び環境の向上の契機になってほしい。
今年に入って、鬼ごっこ協会公式ブック『まるごと鬼ごっこ』や『図書館版スクール鬼ごっこ「めざせ!鬼ごっこ博士“遊びの王様”のルーツをさぐる」』などの書籍(共に、いかだ社)も刊行された。これらは鬼ごっこを愛するすべての人たちへの贈り物であるが、鬼ごっこを学ぼうとする人にとっての必読書ともいえるだろう。
さて、鬼ごっこ総合研究所では8月5日に研究ミーティングを開催することが発表されている。どんな議論が展開されるのか、今から楽しみだ。
中島 智 / Nakajima Tomo
羽衣国際大学 現代社会学部 准教授
1981年滋賀県生まれ。専攻・関心分野:観光学・地域文化政策・子ども文化論・福祉文化学。東京立正短期大学現代コミュニケーション学科専任講師を経て、羽衣国際大学現代社会学部専任講師(京都文教大学総合社会学部非常勤講師を兼務)。「知る前に感じる」「動きながら考える」「遊ぶように生きる」ことを学生たちと実践している。共編著に『新・観光を学ぶ』(八千代出版、2017年)。共著に『こども文化・ビジネスを学ぶ』(八千代出版、2016年)など。
<その他、所属>
一般社団法人東京スポーツクロスラボ 監事