2016.9.21

『オニ文化コラム』Vol,18

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術楽部講師

だんだんと寒くなってきた気がしないでもないこの頃。そろそろ暖かいモノが欲しくなってまいりました。
 
コンビニに行けば肉まん。薬局に行けば温泉のモト…子供の頃、私はツムラさんの商品『日本の名湯』シリーズの「登別カルルス」(北海道)にそれはもう憧れたものです。カルルスという響きがそれはもう妖しくて(笑)
 
 そう思って、登別温泉をネット検索したら…え、鬼がいる(汗)
 登別といえば「のぼりべつクマ牧場」と思い込んでいた私、反省です。
 
 登別のお湯を守る神様を湯鬼神(ゆきじん)と言います。右手には「かぐら鈴」、左手には「剣」を持ち、シャンシャンシャンシャン音を鳴らしながら温泉街にやってきては色々なイベントに出現。みんなの幸せを願い、厄払いをしてくれるそうです。地域の方々に優しい神様ですね。さらに、夏の「地獄の谷の鬼花火」では湯鬼神自らが手筒花火を打ち上げるとか。どこまでサービス旺盛な鬼なんだ(汗)
 ちなみにこの地獄谷は、倶多楽(クッタラ)火山の噴火活動でできた爆裂火口跡。直径450mの谷底には大地獄を中心に15の地獄があり、毎分3,000Lが湧き出しているので、もうこれは地獄百貨店。
 
さて、そんな登別温泉の温泉街には色々の鬼が…デザイン的には赤鬼と青鬼と閻魔大王がいる様子。ん?そんなセットは民俗学的にはあまり馴染みがない…どういうこと?
しかもよく見たら、中央自動車道登別東インターチェンジを出たら大きな鬼さん、JR登別駅を降りたら鬼さん、温泉街のいたるところに鬼さん、公園にも鬼さん、とある旅館の中にはでっかい金棒まで…いや、どうやら登別温泉泉源公園には2013年、9本の金棒が出現している(汗)
 
ここまで鬼推しをする町だったのですね。カルルスどころでなかった…。
 
実は、登別温泉は昭和39年(1964年)から地獄谷を連想する鬼を主役にした「地獄まつり」を行っております。そして昭和47年(1972年)には鬼が主役の「湯まつり」が始まり、「湯鬼神かぐら」という芸能も生み出しました。以後、鬼の像が街の色々な場所に作られていきました。
 
そう、登別の鬼は、町おこしの鬼!
北海道の鬼は地域活性のために一緒に動いてくれる、ハートも温かい鬼たちです♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長


民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか